ソファにゆったりと身を預けている。
少し離れた椅子には、浅く腰掛けている従者。
1メートルの間。手を伸ばしても触れることはできない。
求めていたものを得るための最後の1メートル。
あと1歩踏み出せばいいのだと、意識するからこそ。
欲していることを強く認識もするし、与えたものを
深く刷り込むことにもなる。
なくてはならない、その1メートル。
ふと訪れる沈黙。
交わされる視線。
息遣いと衣擦れの音が、はっきりと聞こえ始める。
ソファから投げ出した足を、従者の方に差し向ける。
従者の視線が足先にそそがれている。
従者は座りなおすようなしぐさを何度か繰り返しながら
おずおずと手を伸ばし、足に触れてくる。
一度触れると、もう止めることはできない。
腿の上に頭をもたせかけてくる。
すりあがりながら胸に顔をうずめてくる。
シャツの胸元に鼻をすりよせ深く息を吸っている。
ふれあっている身体の様子から、力が抜けていくのを感じる。
なすがままにさせながら、あえて、じっとしたまま。
従者を見下ろすように観察する。
ふと見上げた従者の瞳が、じっと観察されていることを察し、
悦びの光をたたえる。
ただ自ら欲していたものを与えられたというだけでなく、
与えることがまた悦びであることを、見て取ったことにも
その悦びの源がある。
その瞬間。深く、長い、吐息。
吐息をもらすごとに、従者の緊張が解けていく。
別の反応が沸き起こっている。
頭をなぜるようにして、髪をすき、後ろ髪を鷲づかみにし、
ぐっと引き下げ、乱暴に顔を上向きにする。
肩にかかった髪をよけながら首輪を付ける。
うつむき加減に、瞳を閉じて首輪の感触を味わっている事に満足して、
首輪のリングを引き上げて上向きにさせる。
わずかに開いた口元。
欲情しているのだ。
動作の一つ一つが、乾いた砂に水が染み入っていくように
従者の身体にすりこまれていくのを感じる。
こうして、最後の1メートルは埋まっていくのである。
コメントありがとうございます。
Blogは、いつも拝見していたので、
はじめましてのような気がしません。^^
|前から埋もれていて
何事も目に付く部分でわかったつもりになりがちですが、
その基となっているものが何なのかを探ること。
実際には何もできなくても、その姿勢だけでも
持っていたいなと思っています。
埋もれているものがあるからこそ、
その上に、花も咲けば、実もなるのでしょうから。
今後ともどうぞよろしくです。